2013.11.1 名古屋三菱訴訟 韓国光州地方法院判決文4

3. 本案に関する判断
 ア、当事者の主張要旨
  1) 原告らの主張
    原告らは、日帝強制占領下で被告の前身である旧三菱は、原告らに行政機関等を通じて教育の提供、上級学校への進学、充分な食事と賃金提供等を保障するとして懐柔して募集した後日本に動員したが、実際に原告らは旧三菱の名古屋飛行機製作所や大門工場で、原告らの意思に反して自由を剥奪された状況で強制労働を酷使され、教育の機会や賃金等をまったく提供されなかったので、旧三菱と事実上同一の法人で旧三菱の債務を承継した被告は、原告らに各200,000,000ウォンの慰謝料を支給する義務があり、亡金福禮、亡金淳禮の相続人である原告金中坤に、亡金福禮、亡金淳禮の上記慰謝料合計400,000,000ウォン及び原告金中坤本人の慰謝料として50,000,000ウォンを支給する義務があると主張する。

2) 被告の主張
  これに対して被告は、①原告らは既に同一の請求をした本件日本訴訟で敗訴確定判決を受けたので、原告らの請求は既判力に抵触し棄却されるべきで、②被告は旧三菱と法人格が違うので、旧三菱の原告らに対する損害賠償債務を承継していないし、③原告らが主張する損害賠償債権は請求権協定及びその後続措置に因って消滅したし、④例えそうでないとしても上記損害賠償債権は消滅時効が完成したり、除斥期間が渡過したので、原告らの本件請求は理由がないと主張する。

イ、旧三菱の不法行為責任の成立
 1)準拠法の決定
本件で不法行為に基く損害賠償請求権が成立するかどうかを判断する基準になる準拠法は、法廷地である大韓民国において外国的要素がある法律関係に適用される準拠法の決定に関する規範(以下、「抵触規範」とする)に依って決定されなければならない(1962年1月15日法律第996号として制定された、以下同じ)。前で見た認定事実に従えば旧三菱の行為及びその結果発生という不法行為は旧渉外私法(1962年1月15日法律第996号として制定されたもの、以下同じ)が施行された1962年1月15日以前に発生した。このように1962年1月15日以前に発生した法律関係に適用される大韓民国の抵触規範は、1912年3月28日から日王(天皇)の勅令第21号に依って我が国に依用されて来たが、軍政法令第21号を経て大韓民国制憲憲法の付則第100条に依って、「現行法令」として大韓民国の法秩序に編入された日本の「法例」(1898年6月21日法律第10号)である。上記「法例」に依れば不法行為に因る損害賠償請求権の成立と効力は不法行為の発生地の法律に依るが(第11条)、本件の不法行為地は大韓民国と日本にわたっているので、不法行為に因る損害賠償請求権に関して判断する準拠法は大韓民国法と日本法になるであろう。ところが既に原告らが日本法が適用された本件日本訴訟で敗訴した点に照らして、不法行為の被害者である原告らは自身により有利な準拠法として大韓民国法を選択しようという意思を推認できる点や、このような準拠法になれる色々な国の法がある場合、法廷地の裁判所は当該事案との関連性の程度、被害者の権利保護の必要性と加害者の準拠法に対する予測可能性及び防御権等、当事者間の公平、衝平と正義、裁判の適正性等を共に考慮して準拠法を選択・決定できるであろうが、上記のような要素をすべて考慮する時、大韓民国法を準拠法とすることが正しいと見られる点、等を綜合して大韓民国法を準拠法として判断することとする。進んでは制定民法が施行された1960年1月1日以前に発生した事件が不法行為に該当するか余否の判断に適用される大韓民国法は、制定民法附則第2条本文に従って「旧民法(依用民法)」ではなく「現行民法」である。

2)判断
    上記認定事実を準拠法である現行民法に照らして見れば、日本政府は中日戦争と太平洋戦争等、不法な侵略戦争の遂行過程で基幹軍需産業体である軍需工場に必要な人力を確保するために、長期的な計画を立てて組織的に人力を動員したし、核心的な基幹軍需産業体の地位にいた旧三菱は、日本政府の上のような人力動員政策に積極的に協力して人力を拡充したが、原告らは当時朝鮮半島と韓国民が日本の不法で暴圧的な支配を受けていた状況の下で、その後日本で処せられる労働内容や過酷な環境等に対してよく判らないまま、日本政府の上記のような組織的欺罔に依って強制連行された。進んで女子勤労挺身隊令の規定に照らし、旧三菱の申請で日本政府が必要人員を募集したと見られる点、原告らは当時満13、14歳の幼い少女たちで、1932年頃日本が批准登録した強制労働に関する条約で絶対的に禁止される強制労働の対象なのだが、旧三菱もまたこのような点を知っていたと見られる点等に照らして見れば、旧三菱もまた原告らが強制連行されたという事実に対して知っていたり、知ることができたと見られる。
    ましてや原告らは当時満13、14歳の未成年者で、幼い歳で家族と離別したり、生命や身体を脅かせられる可能性が非常に高い劣悪な環境で危険な労働に従事したし、具体的な賃金額もしらされないまま強制労働をした。旧三菱は原告らに日曜日を除いては毎日朝8時から夕方6時まで労働に従事させながら、厳しい監
視をしたし、家族との書信交換も事前検閲に依って制限し、食事の量や質もまた著しく粗末で、賃金もまったく支給されなかった。1944年12月7日東南海地震が発生し、本件工場が崩れた時にも、原告らに適当な避難場所や食糧を提供する等の救護措置を取ったりしないまま放置した。
 上のような旧三菱の原告らに対する強制連行及び強制労働は当時、日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配及び侵略戦争の遂行に積極的に参加した反人道的な不法行為に該当し、東南海地震が発生した時原告らに対して何の救護措置を取らないまま放置して亡金淳禮を死亡にまで至らせた行為は、事実上の雇用関係にある原告らに対する、使用者としての安全配慮義務を放棄した不法行為に該当するものであり、このような不法行為に因り原告らがひどい精神的苦痛を被ったことは、経験則上明白である。
 したがって旧三菱は上記のような不法行為に因る原告らの精神的苦痛に対して、これを賠償する責任がある。

ウ、原告らに関する本件、日本の判決の既判力認定に関して
   被告が旧三菱の不法行為責任をそのまま負担するかに関して調べてみる前に、原告らに関する本件日本判決が既判力を持つかどうかに関してみてみる。
   法廷地の手続法であるわが国の民事訴訟法第217条第3号は、外国の裁判所の確定判決の効力を認めることが大韓民国の善良な風俗や、その他の社会秩序に背かないようにしなければならないという点を、外国判決承認要件の一つと規定している。ここで外国判決の効力を認めること、即ち外国判決を承認した結果が大韓民国の善良な風俗や、その他の社会秩序に背くかどうかは、その承認の可否を判断する時点で、外国判決の承認がわが国の国内法秩序が保護しようとする基本的な道徳的信念と社会秩序に及ぼす影響を、外国判決が扱った事案とわが国との関連性の程度に照らして判断しなければならず、この時その外国判決の主文だけでなく、理由及び外国判決を承認する場合、発生しうる結果まで総合して検討しなければならない(大法院2012年5月24日宣告2009タ22549判決)。
   よく調べると、原告らが本件訴訟と同一な請求原因で被告を相手にした訴訟を日本の裁判所で起こし、敗訴判決の宣告を受けその判決が確定したことは前でみた通りだが、甲第1、2号証(枝番号がある場合、各枝番号を含む)の各記載に依れば、前でみた本件日本判決は原告らが居住していた朝鮮半島を日本の領土の構成部分に見ることで、上の原告らの請求に適用される準拠法を、外国的要素を考慮した国際司法的な観点から決定せずに、初めから日本の法を適用した事実、「日本国は1952年4月28日発布された平和条約2条で朝鮮の独立を承認し、朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄した」と前提した事実、旧三菱が事前の説明とは異なり原告らを本件工場で自由が制約された状態で違法に強制労働に従事させた点、実質的な雇用主として原告らに賃金をまったく支給せずに、安全配慮義務をきちんと履行しなかった点等、原告らの請求原因に関する一部主張を受け入れながらも、請求権協定と日本の財産
   措置法に依って消滅したという理由で、結局上の原告らの被告に対する請求を棄却した事実等が分かる。
    このように本件日本判決の理由には、日本の朝鮮半島と韓国人に対する植民地支配が合法的という規範的認識を前提に、日帝の国家総動員法、国民徴用令、女子挺身勤労令を朝鮮半島と原告らに適用することが有効と評価した部分が含まれている。
しかし大韓民国制憲憲法は、その前文で「悠久な歴史と伝統に光輝く我ら大韓国民は、己未3・1運動によって大韓民国を建立し、世界に宣布した偉大な独立精神を継承し、これから民主独立国家 を再建するに際し」として、附則第100条では「現行法令はこの憲法に抵触しない限り効力を有する」とし、附則第101条は「この憲法を制定した国会は檀紀4278年(1945年)8月15日以前の悪質な反民族行為を処罰する特別法を制定できる」と規定した。また、現行憲法もその前文に「悠久な歴史と伝統に光輝く我が大韓国民は、3・1運動で建立された大韓民国臨時政府の法統と、不義に抗拒した4・19の民主理念を継承し」、「恒久的な世界平和と人類共栄に貢献することにより」と規定している。このような大韓民国憲法の規定に照らしてみる時、日帝強制占領期の日本の朝鮮半島支配は規範的な観点から不法な「強占」に過ぎず、日本の不法な支配に因る法律関係の内、大韓民国の憲法精神と両立できないものは、その効力が排除されるとみなければならない。それならば本件日本判決の理由は、侵略戦争の遂行のための日帝強制占領期の強制動員自体を不法と見ている、大韓民国憲法の核心的価値と正面から衝突するものである(大法院2012年5月24日宣告2009タ22549判決)。ましてや当時日本政府が「国家総動員法」等の非常手段まで動員して遂行した中日戦争と太平洋戦争が、国際法的に容認できない侵略戦争だった点に対しては国際社会が認識を共にしていて、このような侵略戦争及びこれを遂行する行為の正当性を否認することは世界の文明国家の共通的な価値である。このような事情を綜合すれば、世界各国が共通的に志向する価値に反する判決理由が込められた本件日本判決をそのまま承認する結果は、上の民事訴訟法でいう善良な風俗やその他の社会秩序が国際性まで考慮した概念であることを勘案しても、それ自体で大韓民国の基本的な道徳的信念と社会秩序に違反することが明らかである(民事訴訟法の上の条項でいう「大韓民国の善良な風俗や、その他の社会秩序」の意味は、外国の仲裁判定を承認したり、外国法を準拠法とする時考慮する大韓民国の「公序」と同一なものだが、上の各ケースに関する既存の大法院判例である大法院2009年5月28日宣告2006タ20290判決、大法院2006年5月26日宣告2005ム884判決等も「公序」の意味をこれと同一な趣旨とみている)。
したがってわが国で本件日本判決を承認しその効力を認めることはできないので、本件日本判決が大韓民国で承認できることを前提に、原告らの請求が本件日本判決の既判力に反し認められないという被告の主張は理由がない。

<5へ続く>
by fujikoshisosho | 2013-11-08 18:13 | 韓国レポート


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