2013.11.1 名古屋三菱訴訟 韓国光州地方法院判決文5

エ、被告が旧三菱の債務を負担するかに関して
    まず旧三菱の解散及び分割に伴う法人格の消滅の余否、第2会社及び被告が旧三菱の債務を継承するかどうかを判断する基準になる準拠法もまた、法廷地である大韓民国の抵触規範に依って決定されるべきだが、その法律関係が発生した時点は旧渉外私法が施行された1962年1月15日以前からその後までにわたっている。その内1962年1月15日以前に発生した法律関係に適用される大韓民国の抵触規範は、前でみた「法令」である。上記「法例」は旧三菱と第2会社及び被告の法的同一性の余否を判断する法人の属人法に対して明文の規定を置いてはいなかったが、法人の設立準拠地法や本拠地法に依ってこれを判断すると解釈されていたし、旧三菱と第2会社及び被告の設立準拠地と本拠地はすべて日本なので、旧三菱の解散および分割に従った法人格の消滅の余否、債務承継の余否を判断する準拠法は一旦日本法になるだろうが、ここに会社経理応急措置法と企業再建整備法が含まれるのは当然である。しかし一方、上記「法例」第30条は「外国法に依る場合、その規定が公共の秩序または善良な風俗に反する時には、これを適用しない」と規定していたので、大韓民国の抵触規範に従って準拠法に指定された日本の法を適用した結果が大韓民国の公序良俗に違反するなら、日本の法の適用を排除して法廷地である大韓民国の法律を適用しなければならない。また1962年1月15日以後に発生した法律関係に適用される旧渉外私法においても、このような法理は同様である。
     本件で外国法である日本の法を文言そのままに適用することになれば、原告らは旧三菱に対する債権を被告に対して主張できなくなるが、前に認定事実で見たように、旧三菱が被告に変更される過程で被告が旧三菱の営業財産、役員、従業員を実質的に承継し、会社の人的、物的構成には基本的な変化がなかったのに、戦後処理及び賠償債務解決のための日本国内の特別な目的の下に制定された、技術的立法に過ぎない会社経理応急措置法と企業再建整備法等日本の国内法を理由に、旧三菱の大韓民国国民に対する債務が免れる結果になることは、大韓民国の公序良俗に照らして容認することはできない。(大法院2012年5月24日宣告2009タ22549判決)
 したがって日本法の適用を排除して当時の大韓民国の法律を適用してみると、旧三菱が上記認定事実のカ、項で見たように、責任財産となる資産と営業、人力を第2会社に移転して同一の事業を継続したのみならず、被告自ら旧三菱を被告の企業歴史の一部分として認定している点等に照らして、旧三菱と被告はその実質において同一性をそのまま維持しているものと見るのが相当で、法的には同一の会社と評価しても充分で、日本国の法律が定めるところによって旧三菱が解散し第2会社が設立された後、吸収合併の過程を経て被告に変更される等の手続きを経たからといって別なものと見るべきではないので、原告らは旧三菱に対する請求権を被告に対しても行使できる。

オ、請求権協定によって原告らの請求権が消滅したという主張に関する判断
    調べてみると前の認定事実で見た請求権協定の締結経緯とその内容及び後続状況等に依って知ることができる次のような事情、即ち①請求権協定は日本の植民地支配の賠償を請求するための交渉ではなく、サンフランシスコ条約第4条に基づいて韓日両国間の財政的・民事的債権・債務関係を政治的合意に依って解決するためのもので、請求権協定第1条に依って日本政府が大韓民国政府に支給した経済協力資金は第2条による権利問題の解決と法的対価関係があるとみられない点、②請求権協定の交渉過程で日本政府は植民地支配の不法性を認めないまま、強制動員被害の法的賠償を原則的に否認したし、このために韓日両国の政府は日帝の朝鮮半島支配の性格に関して合意に至らなかったが、このような状況で日本の国家権力が関与した反人道的不法行為や植民地支配に直結した不法行為に因る損害賠償請求権が、請求権協定の適用対象に含まれたと見るのは難しい点等に照らしてみれば、原告らの損害賠償請求権に対しては請求権協定で個人請求権が消滅しなかったのは勿論のこと、大韓民国の外交保護権も放棄されなかったとみるのが相当である。
    仮に原告らの請求権が請求権協定の適用対象に含まれるとしても、①国家が条約を締結し外交的保護権を放棄するだけに止まらず、国家とは別個の法人格を持つ国民個人の同意なしに、国民の個人請求権を直接的に消滅させられるとみることは、近代法の原理と相容れない点、②国家が条約を通じて国民の個人請求権を消滅させることが国際法上許容されるとしても、国家と国民個人が別個の法的主体であることを考慮すれば、条約に明確な根拠がない限り、条約締結で国家の外交的保護権以外に国民の個人請求権まで消滅させたとみることはできないだろうが、請求権協定には個人請求権の消滅に関して韓日両国の意思の合致があったとみるのに充分な根拠がない点、③日本が請求権協定直後、日本国内で大韓民国の日本国及びその国民に対する権利を消滅させる内容の財産権措置法を制定・施行した措置は、請求権協定だけでは大韓民国国民個人の請求権が消滅しないことを前提とする時、初めて理解できる点等を考慮してみると、原告らの請求権自体は請求権協定で当然消滅するとみることはできず、ただ請求権協定でその請求権に関する大韓民国の外交的保護権が放棄されることにより、日本の国内措置で該当請求権が日本国内で消滅したとしても、大韓民国がこれを外交的に保護する手段を喪失することになるだけとみるのが相当である。
 したがって原告らの被告に対する不法行為に因る損害賠償請求権は、請求権協定で消滅しなかったといえるので、原告らは請求権協定にも拘わらず被告に対して、上記請求権を行使できる。
    被告は上記のように請求権協定を解釈することは大法院2012年5月10日付2012タ12863審理不続行判決に反すると主張するが、上記判決の事案は請求権協定締結と関連した大韓民国公務員の行為が不法行為に該当するかどうかに関するもので、本件と事案を異にするものなので、審理不続行判決は上告理由の主張が上告審手続に関する特例法第4条第1項に定めた事由を含まないケースであったり、またはそのような主張があったとしても上記原審判決と関係がないか、原審判決に影響を与えない時に言えるもので、上記判決が請求権協定に関して、被告の主張と同じ解釈をしている判例とみることはできない。


カ、消滅時効の完成主張に関する判断

 1)準拠法の決定
    原告らの請求権が成立した時点で適用される大韓民国の抵触規範に該当する上記「法例」によれば、不法行為に因る損害賠償請求権の成立と効力は不法行為の発生地の法律に依るが(第11条)、本件の不法行為地は大韓民国と日本にわたっているので、不法行為に因る損害賠償請求権に関して判断する準拠法は大韓民国法もしくは日本法になるだろう。しかし既に原告らは日本の法が適用された日本の訴訟で敗訴した点に照らして、自身により有利な準拠法として大韓民国法を選択しようという意思を持っていると推認できるので、大韓民国の裁判所は大韓民国法を準拠法にして判断しなければならない。さらに制定民法が施行された1960年1月1日以前に発生した事件が不法行為に該当するのかどうかと、その損害賠償請求権が時効で消滅したかどうかの判断に適用される大韓民国法は、制定民法附則第2条本文に従って「旧民法(依用民法)」ではなく「現行民法」である。したがって日本法が準拠法という前提の下で、除斥期間が渡過したという被告の主張は、より進んで調べる必要がなく理由がない。

 2) 消滅時効が完成したという抗弁の可否
    消滅時効は客観的に権利が発生してその権利を行使できる時から進行し、その権利を行使できない間は進行しないが、ここで「権利を行使できない」ケースというのは、その権利行使に法律上の障害事由、例えば期間の未到来や条件不成就等がある場合をいうのであり、事実上権利の存在や権利行使の可能性を知らず、知らなかったことに過失がないとしてもこのような事由は法律上の障害事由に該当しない(大法院2006年4月27日宣告、2006タ1391判決等参照)。
    一方、債務者の消滅時効に基づく抗弁権の行使も、民法の大原則である信義誠実の原則と権利濫用禁止の原則の支配を受けるものであり、債務者が時効完成前に債権者の権利行使や時効中断を不可能または顕著に困難にさせたり、そのような措置が不必要と信じさせる行動をしたり、客観的に債権者が権利を行使できない障害事由があったり、または一旦時効完成後に債務者が時効を援用しないような態度を見せて権利者にそのように信頼させたり、債権者保護の必要性が大きく同じ条件の他の債権者が債務の弁済を受領する等の事情があって、債務履行の拒絶を認めることが顕著に不当であったり、不公平になる等の特別な事情がある場合には、債務者が消滅時効の完成を主張することが信義誠実の原則に反し権利の濫用なので許容できない(大法院2011年6月30日宣告、2009タ72599判決等参照)。
    本件に関してみると、前で引用した証拠に弁論全体の趣旨を綜合すれば、①
 旧三菱の不法行為があった後、1965年6月22日韓日間の国交が樹立する時までは、日本国と大韓民国間の国交が断絶していて、したがって原告らが被告を相手に大韓民国で判決を貰ったとしても、これを執行できなかった事実、②1965年韓日間に国交が正常化されたが、韓日請求権協定関連文書がすべて公開されていない状況で、請求権協定第2条及びその合意議事録の規定に関連して、請求権協定で大韓民国国民の日本国または日本国民に対する個人請求権が包括的に解決したという見解が大韓民国内で一般的に受け入れられて来た事実、③日本では請求権協定の後続措置として財産権措置法を制定して、原告らの請求権を日本の国内的に消滅させる措置を取り、原告らが起こした日本の訴訟で請求権協定と財産権措置法が原告らの請求を棄却する付加的な根拠として明示されたりした事実、④ところが原告らの個人請求権、その中でも特に日本の国家権力が関与した反人道的不法行為や植民地支配に直結した不法行為に因る損害賠償請求権は、請求権協定で消滅していないという見解が、原告らと似たように強制動員された被害者たちが日本で訴訟を起こした1990年代後半になって徐々に明らかになったし、やっと2005年1月韓国で韓日請求権協定関連文書が公開された後、2005年8月26日日本の国家権力が関与した反人道的不法行為や植民地支配に直結した不法行為に因る損害賠償請求権は、請求権協定で消滅したとみることはできないという民官共同委員会の公式的見解が表明された事実、⑤被告は本件日本訴訟が終了した2008年以後、原告らと約17回にわたって補償等のために交渉を継続した事実、⑥大法院は2012年5月24日宣告2009タ22549号、2009タ6820号判決を通じて、原告らと同じ強制労働被害者に対する損害賠償請求を棄却した日本判決は大韓民国の公序に反し、承認できないと判示した事実等を知ることができる。
 ここで先に見たように、旧三菱と被告の同一性に対しても、疑問を持たざるを得ないような日本での法的措置があったことを加えてみると、少なくとも原告らが本件の訴訟を起こした時点である2012年10月24日までは、原告らが大韓民国で客観的に権利を事実上行使できない障害事由があったとみるのが相当である。
 これに加えて旧三菱の本件不法行為は原告ら個人の尊厳を否定し、正義・公平に著しく反する行為で、債権者である原告らの保護必要性が大きい点、消滅時効制度は一定期間続いた社会秩序を維持し、時間の経過に因り困難になる証拠保全から救済し、自己の権利を行使せずに権利の上に眠っている者を法的保護から排除するために認められた制度なのに、原告らは本件日本訴訟を起こし、上の訴訟で敗訴した以後、再びこの訴訟を起こす等、権利の上に眠っている者と見ることは難しい点等に照らして見ると、旧三菱実質的に同一な法的地位にあると被告が消滅時効の完成を主張し、原告らに対する不法行為に因る損害賠償債務の履行を拒絶することは、著しく不当で信義誠実の原則に反する権利濫用で、許容できないといえる。したがって被告の上の主張も理由がない。

<6へ続く>
by fujikoshisosho | 2013-11-08 18:17 | 韓国レポート


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