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【寄稿】ソウル日本大使館前の元従軍「慰安婦」被害者少女像に思う

                                             
                                     李龍海(イ・ヨンヘ)

昨年末の韓日首脳会談において、李明博韓国大統領は就任後始めて日本軍「慰安婦」問題を取り上げ、この問題解決の「勇気ある一歩を踏み出す」ことを日本側に1時間にわたって主張した。野田首相はこれに対し「法的に解決済み。ソウル日本大使館前の少女像を撤去してほしい」と反論したが、李大統領はさらに「積極的取り組みがない場合は第2第3の少女像が建つ」と応じたと報じられている。

この「少女像」とは昨年末12月14日に、ソウルの日本大使館前の歩道に「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会」によって、大使館に対する水曜デモ1000回を記念して建立された高さ1メートル20センチの元「慰安婦」の少女時代を表現した見事なブロンズの坐像である。その隣に同じくブロンズ製の椅子を設置し、これに座ることで平和と歴史を考える場所にしたいという意図がある。また土台の石にはハングル、日本語、英語で「『慰安婦』問題解決のための水曜デモが1000回を迎えるに当たり、その崇高な精神と歴史を引き継ぐため、ここに平和の碑を建立する」と書かれている。

政権末期であり与党候補の次期当選が否定的に観測される中で、与党浮上のパフォーマンスとして見ることはできるものの、李氏にとって初めて国民的評価をもたらす発言であったろう。一方、野田氏の反論を見るとき、自らの立場は韓日条約という一応の法規範を根拠として防衛しながら、相手には私物に対する国家権力による撤去という私法・私有権への法的逸脱を迫る明らかな論理矛盾をさらけ出すものだった。一国の最高責任者がたまさかでも法を犯すことを外交交渉の中で主張するなど、一体何様、やくざ映画のチンピラ親分のセリフではないか。日本の相も変わらずの政治屋どもの矮小な水準をさらけだすに十分であろう。 
それにしても日本側はなぜかくもこの少女像に毛羽立ち嫌悪するのか。 この少女とはたとえば野田氏にとって何を意味するものなのだろう。
 
会談直後、祖母が「慰安婦」被害者であり、その父親が日本に弾圧された独立運動家だったという一人の勇気ある青年がついに火炎瓶を日本大使館に投げ入れる事件が起こった。そのやむにやまれぬ行為は被害者ハルモニたちに残された時間がいまや刻々と極限に達していることを我々に知らしめる。彼の行為の余儀なさは、水曜デモの参加者をはじめ、韓国民およびすべての支持者の胸を深くえぐるものだ。
恨み耐えがたき者の死体は腐らないとの言伝えが韓国にはある。まさに朝鮮半島の民衆史を表す言葉であろう。この「死体」を「記憶」に置き換えれば、火炎瓶投擲者・彼と私たちの心影はぴたりと一致しその輪郭は鮮明である。(『恨』として知られる心情が潰えた希望の堆積がかもす悲哀の情だというのは、おそらく日本人向けに喉越しよく変質されたものだと思える。)
被害の記憶が今なお私たちの恨みであり続ける理由は、日本の国家と民族の名における謝罪と賠償がなされることなく、被害者の生命の炎が一つ一つ遠ざかり、さらにそのような状況と逆行するように日本側の加害者としての記憶の継承が社会全体にわたって断絶しているためだ。

野田氏やその政権が無防備なまでに感情的な拒絶反応を示す理由はまさにここにある。彼らはソウル日本大使館前の少女像を想起するたびに、歴史記憶の断絶と政治的責任の拒絶の狭間に走る、深い心理的亀裂に疼痛を覚えるはずだ。その亀裂は個人の問題にとどまらず、日本の政治と文化にある種の深い毒の闇をしたたらせ、この社会を腐敗させてきたし、これからも亡霊の出現のようにして自らを脅かし続けることだろう。あの少女像は、日本側が支払わなければならない歴史的債務の完済能力の無能と不所持を彼らに想起させるのだ。彼らにとってそれは、自らの民族の残虐な加害の記憶を語り継ぐことのなかったその歴史の空虚と記憶喪失がもたらす政治的文化的破綻そのものの見事な隠喩であるのだ。
このような闘争アイテムは、強制連行問題でも有効な契機をもたらすと私には思える。 
㈱不二越や他の強制連行企業の前に、少しの土地を運動体が所有し、そこに被害者の像を設置し、被害の実態と企業と国と自治体と民族の責任を明らかにする文言を明記する。ソウルのあの一体のブロンズの少女像と空席の椅子は、姿を変えて日本国内各所に出現する必要性と可能性があるだろう。

日本には社会の基本的編成や基礎的社会思想を変換させるためのスイッチが欠如しているのだと思える。80年代から構造改革として始まった新自由主義政策により疲弊しきった一般大衆と超え太った大企業の二極化を基本構造とするこの社会を守り抜くために、日本支配層は大部分の被支配層に対し、見えざる戦争をありとあらゆる方法を駆使して、延々と繰り広げていることに気づかなければならない。戦争はある種の方法を変えた政治の継続であるという古びた戦争論があるが、この主客を転倒せよといったのはM.フーコーである。つまり政治とはある種の方法を変えた常なる戦争なのだと。
この常態化した戦争を勝利的に戦い抜いている世界の民衆の一部に韓国民衆が位置付けられるのかも知れない。今年は4月の国会議員選挙と12月には大統領選挙が控えている。今回から在外選挙人登録制度が始まり、筆者も駐名古屋総領事館で選挙人登録を済ませた。韓国の国政選挙に投票できることが何とも誇らしい。韓国もまた金大中政権以降、新自由主義を構造化してきた国家である。これを乗り越えることは困難な課題かもしれない。しかし暴走と破綻を繰り返すアメリカ追随型の新自由主義を採用していない成長国家を見つけることはさほど難しくはない。この課題を突破できなくとも、少なくとも挑戦的である党派と候補を選ぶつもりであるし、そのような政治は必ず勝利するだろう。そして日本に対し北朝鮮や中国と連携しつつ過去清算の問題を公然と主張し続けるだろう。
過去未清算、原発継続に象徴される変わることができない日本は、記憶喪失と放射能によって原状回復不能なまま、その深部から今ついに死につつあるに違いない。 
by fujikoshisosho | 2012-02-02 13:33 | 寄稿

寄稿 歴史の真相を究明し行動する歴史学者に学ぶ

鄭宗碩(チョン・ジョンソク)
関東大震災朝鮮人虐殺真相と名誉回復を求める市民の会 在日代表

新宿のアリラン文化センターで10月2日、関東大震災時の朝鮮人虐殺の研究者で著名な歴史学者山田昭次先生の出版記念祝賀会があった。2003年に「朝鮮人虐殺の国家責任と民衆責任」出版から8年がたち、その間に先生自身が東京周辺の裁判所などで確認された貴重な資料、その数は大変多い。先生は当時の事を歴史に残し世に明らかにする事を学者として“至上義務”としてきたが近年先生はやり残している事に心を痛めていたのだ。虐殺それ自体を研究し言及する研究者は少なくないが、肝心な現在までのその後をテーマを追跡し深く掘り下げる事を等閑にしている事に…。

出版祝賀会には親交のある学者、教え子、熱烈な支持者ら多数が集まった。熱気溢れる祝辞、東大の石坂教授もソウルから帰国し空港からその足で駆け付け、山田先生の輝かしい業績と学者として直向きで飾らないその姿勢を称揚した。教え子のひとりは山田先生に会い、自分の“人生を変えられた”と言う。勿論人間としての生き様に。無年金の在日同胞を何とか救済しようと雑誌「世界」に論文を発表し日本政府の非人間的な差別政策を糾弾した。自分の事がそのようにまで扱ってくれた在日の女性の感動で涙咽ぶ言葉が印象的だった。山田先生曰く「もう自分も80歳をこえた。この本を書き終えたのでいつ“お迎え”が来てもいいようにしようと思った。」とその後が研究されていない事と今の日本のあり方を憂慮され、力強く強調された。どの祝辞も異口同音に先生の健康を心から願うものばかりだった。

また自分は学者ではなく社会運動家であると…。不二越訴訟での支援には頭が下がるばかりだ。高麗博物館の名誉館長でもあり文化センターアリランの宋富子さんは訴えた。「先生のお元気なうちに資料館を建てようではないか、と。私もこの運動の在日代表ではあるが、虐殺された同胞の無念とこの地に呻吟する霊魂を一日でも早く慰める為にも私達の運動はまだまだ幾つものアリラン峠を越えなければいけないのだ。
                                             2011年10月5日

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           山田昭次さんの本『関東大震災時の朝鮮人虐殺とその後』
by fujikoshisosho | 2011-10-10 17:07 | 寄稿


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