連絡会ニュース73号発行(2017年2月号)
内容は
・11/23 韓国二次訴訟判決 一審原告勝訴判決
・韓国二次訴訟原告 イソクウさんインタビュー
・韓国民衆の戦いにどう応えるべきか 日韓「合意」と戦争法をめぐって
・投稿 「平和の少女像」がみつめる先にあるもの 西中誠一郎
・投稿 マスコミを頼らない 畑 真理子

【投稿】韓国民衆の闘いに、どう応えるべきか
日韓「合意」と戦争法をめぐって
韓国・光化門での35万キャンドル集会で、朴退陣非常国民行動共同代表(民主労総)が「大統領の顔が変わっても終わりではない。財閥体制を終息させ、皆が一緒に暮らせる世の中を」「今の政局を作ったのは千万キャンドルだ」と発言した。日本の我々はこれを如何に考えるべきか。
日韓「合意」に賛成したマスコミ・「知識人」
日本総体に右翼的・体制翼賛が広がっている。2015年12月28日の、「慰安婦」問題についての日韓「合意」では、安倍首相と朴槿恵大統領が「少女像撤去」「最終的・不可逆的解決」「日韓新時代の始まり」と声明した。
これに、日本の全マスコミはもろ手を挙げて賛成した。最も驚いたのは、戦争法反対の「進歩的文化人」にも賛成者がいた事だ。彼らは「合意を前提に闘う」「安倍首相が元『慰安婦』へ手紙を」と言っている。「被害者が納得していない」の意見は少数だった。
安倍政権に利用されハルモニの怒りを共有できなかった日本人
「日韓合意」の事前の環境作りには、朴裕河著「帝国の慰安婦」が利用された。「慰安婦」被害者のハルモニ9名が満身の怒りで著者の朴裕河を弾劾して告訴し、韓国検察も起訴に踏み切った。この事態に、日本人はハルモニに対する差別者となるか、共に闘う側に立つかが問われていた。
しかし、戦争法に反対表明していた「知識人」がこの深刻さを自覚出来ず、ハルモニを声明の形で差別する側に立つという、信じられない事態が起こった。「リベラル」の54名が、朴裕河起訴(2015年11月26日)に対して「抗議声明」を出し、「言論の自由への弾圧」だと記者会見したのである。しかも、「予断と誤解に基づく判断での起訴」「朴裕河の意図を理解していない」と、被害者ハルモニの告訴を批判する内容だった。
彼らは、高齢のハルモニたちが告訴までした意味を全く理解出来なかった。日本によって強制連行された少女たちが慰安所で苦しんだ事実を真正面から見据えることもできなかった。加害者である日本人として、ハルモニの怒りを受け止めることも出来ず、ましてやハルモニの闘いに謙虚に学ぼうとする姿勢は一片も無かった。
結果、54人もの「知識人」が安倍政権の日韓「合意」推進に加担したのである。安倍政権に上手に乗せられたのであるが、しかし、彼らの責任はあまりにも大きい。
「合意」を戦争法と切り離した安倍の世論操作
安倍首相らが「合意」策謀を行う過程は、マスコミや民間基金関係者、保守層学者へも及ぶ広範な人々を介して行われた。安倍は「慰安婦」問題について、「被害者が高齢で相次いで亡くなり、できる限りの人道的な対策を取る」などと言い、あたかも政治とは関係がないかのように装った。
まず朝日新聞への「慰安婦」報道叩きや不買運動で、「良識ある朝日」という肩書も放棄させた。朝日新聞に「帝国の慰安婦」本を高く評価した「記事」を書かせた。更に、日韓の人脈を使って、「帝国の慰安婦」を支持する親日派の韓国学者・知識人を作った。
こうした流れの中で、日本の中で戦後補償問題に取り組んできた者さえ、「高齢の元『慰安婦』へ何らかの謝罪の言葉と物質的援助を考えるべき」と言い出した。日本社会全体に、まるで「慰安婦」問題と戦争法や日韓の軍事動向は全く別問題で、それに触れると「政治的」と言われるような雰囲気が作られていった。
日韓「合意」は被害者と韓国民衆の怒りに火を付けた
一方韓国では、日韓「合意」は安倍の戦争法・日韓軍事同盟の締結をめざす日本の韓国への侵略行為だと韓国の全部に見抜かれている。
昨年9月10日、稲田防衛大臣が韓国国防相と電話会談を行い、軍事情報協定締結を迫った。韓国ではこれに対する抗議行動があり、ネット上には「日本は再び韓国を植民地にするつもりだ」と書きこまれた。次いで10月23日、安倍首相が陸自観閲式でPKO派遣の発言を行った。これについて韓国のマスコミは、韓国に自衛隊を派遣する訓辞だと正しく報じている。そして12月28日の「合意」である。ここに植民地支配時代と同じ、安倍政権の横暴で傲慢な態度が示された。「慰安婦」被害者は怒りを政府にぶつけ、学生たちは「少女像を守れ」と、零下のソウルでビニール袋を被って徹夜の座り込みをした。
帝国主義者の本性を現した安倍政権と、韓国民衆を裏切った朴一味に対し、民衆の怒りが燃え上がっている。
アジア再侵略のための戦争法
「合意」に対する韓日の認識には、天と地の差がある。この落差の大きさに、かつて韓国植民地化に抗して闘った義兵を虐殺した日本の歴史が想起される。
戦争法の最大課題は、韓日(米)戦争体制を作ることである。安倍首相は、中国包囲網として東アジアに日本(経済・軍事)勢力圏を作ろうとしている。大東亜共栄圏の現代版には韓国の位置が最重要であり、先ず韓国を日本と軍事的に一体化させるのが全体構想の前提条件である。
米国は韓国に「日本の過去を問うな。中国包囲・対北戦争体制を進めよ」と迫っていた。米軍と朴大統領は、北朝鮮に圧力を加えて戦争危機を扇動した。韓国民衆が大統領弾劾を叫んで100万人のろうそくデモに立ち上がり、朴政権が風前の灯だった11月23日に急遽「日韓軍事情報共有協定」を(焦って)締結した。日韓米は、動揺する政局の渦中で「対中国・北朝鮮戦争体制を断固として進める」との意思を示したのである。
こうした韓国情勢は何によって作られたのか。安倍政権は、戦争法を9月に成立させている。現在、朝鮮戦争は休戦状態であり米軍が駐留する準戦時体制下にある。朝鮮有事における作戦指揮権は米軍が持っている。この下で自衛隊が朝鮮半島で戦闘するのだ。日本の戦争法成立によって、韓国の戦争危機を深めたのだ。
日本の我々は安倍首相のペテンに騙されて、日韓「合意」という極めて政治的な攻撃を、戦争法とは切り離して考えている。これが日韓の民衆意識の深刻な食い違いなのだ。我々は、韓国民衆の闘いが素晴らしいと言う前に、我々の認識を反省し変革しなければ一歩も進まない。
従って、 戦争法反対の考え方も違ってくる。闘うスローガンは「アジア民衆を虐殺した歴史を二度と繰り返さない」「少女像は侵略に抗する韓国民衆の砦であり、日本民衆の共通の砦として守り抜こう」。
侵略戦争・植民地支配責任を不問に付した「戦後日本」
日本はアジア侵略と植民地支配を行い、中国大陸をめぐり、米英の利害と衝突して第二次大戦に突入した。日清・日露戦争から「韓国併合」・植民地支配を基礎に中国侵略へと突き進み、民衆を虐殺してきた結果が日米戦争と敗戦である。歴史を逆に述べては、嘘になる。
敗戦後、米国は日本の政治経済全ての間接統治を行う「憲法」を作った。当時の米国と世界、日本の旧体制を維持したい勢力の意図が絡まって成立したのが日本国憲法である。憲法前文には、アジア侵略と植民地支配についての言及がない。ここに戦前と戦後の連続性が示されている。
「憲法が平和を守った」のではない。平和と戦争は表裏であり、憲法と安保も表裏である。沖縄が米軍統治下に置かれ、「復帰」後もずっと基地の島とされていることは、憲法と一体の安保・戦争体制の実体なのだ。米軍が戦場に行き、日本は軍事経済の兵站を担ったから「一人の死者も出なかった」のは当然だ。
むしろ日本は、憲法の下で世界に経済侵略を行って「経済大国」になった。安倍は、世界の経済権益や邦人を守る為には、戦争法での自衛隊派遣が必要だと言っている。
「憲法」は国家権力を縛る意味で使うのである。国家が民衆を縛る「憲法」にされたり、闘いよりも「憲法の条文」に頼ると、安倍改憲攻撃に受け身の守れ運動で、敗北する。憲法の「国籍条項」で「国民の権利」から「在日」を除外している内容も重大である。憲法9条の制定に関しても「専守防衛の武装」の余地が制定に際して行われた。
「憲法」は、国際社会・米国との関係、民衆と権力と具体的関係で成立した。我々の実践的な運動で突破して行く事が重要だ。
「真の連帯」の内容を問い直し勝利へ向かおう
安倍首相の夢想する大東亜共栄圏=アジア覇権は、韓国民衆の空前の闘いによって破綻に向かっている。そして、少女像に見られるように韓国の政局は激動している。同時にこの闘いは、日本民衆が韓国民衆と真に連帯出来る内容、侵略の歴史と再侵略を阻止するという一体性を持っていなければ勝利出来ない。問われているのは我々である。日本の闘いが勝利するには「アジア・韓国の勝利と一体的でなければ日本民衆の勝利もない」。韓国の闘いは日本の闘いの明日の姿にしなければならない。安倍政権には朴槿恵の没落と同じ姿が待っている。韓国は財閥と政権の癒着・格差が酷いと言われる。だが、日本も同じである。日本と韓国の経済規模が数倍も違う。実は、韓国経済の危機は、明日の日本である。
韓国・アジアの民衆運動と心が通じる闘う内容が問われていた。日本軍「慰安婦」被害者ハルモニの怒りを受け止められなかった「日本社会の敗北」を、現場から突破することから始まる。韓国各地の少女像は、日本の再侵略の戦争法を阻止する闘いとして、日韓民衆の連帯を呼びかけている「闘いの象徴」だ。韓国民衆と連帯し、日韓「合意」を撤回させよう。
戦争法の発動としての日韓軍事同盟への動きを阻止しよう。安倍戦争政権、そして朝鮮戦争を策謀する戦争勢力を倒そう。
(
村山和弘)
【寄稿】 「平和の少女像」がみつめる先にあるもの 西中誠一郎
■ 虚勢だけの安倍首相の施政方針演説と空虚な国会審議
1月20日から第193回通常国会が始まった。冒頭の安倍首相の施政方針演説は、昨年末「慰霊と和解の力を日米と世界に示したい」と誇示した真珠湾訪問への思いと、明治維新から70年経った敗戦当時の日本が、戦争の廃墟の中から経済復興を遂げ、それから70年が経過し、再び困難な世界情勢に直面する中で、「未来を生きる世代」のため、次なる70年を見据えて「もう一度スタートラインに立って、共に、新しい国創りを進めていこうではありませんか」と呼びかける言葉に始まった。
日米同盟を外交•安全保障政策の基軸にした「世界の真ん中で輝く国創り」を掲げ、「米国との信頼関係の下、抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担軽減」のために、辺野古新基地建設を強行し、「自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々と連携」し「地球を俯瞰する外交」を展開、「世界の真ん中で、その責任を果たしてまいります」と息巻いた。
「未来」や「壁への挑戦」などの単語を連呼し、締めくくりに、憲法改正に向けた憲法審査会での議論の活性化と、再度「世界の真ん中で輝く日本」「一億総活躍の日本」の実現を訴えた。まるで21世紀版の「大東亜共栄圏」における、「東亜新秩序」(1938年近衛文磨首相声明)と「国家総動員体制」(1938年帝国議会制定)の宣言のように感じ、背筋が寒くなった。
昨年末、安倍首相は「最後の戦後処理」とうたった日露首脳会談、次いで真珠湾「慰霊」訪問を行い、その最中に稲田防衛大臣は靖国神社を参拝した。アジアへの侵略戦争の言及は一切なかった。また日本軍「慰安婦」問題の日韓外相会談から12月28日で丸1年が経った。被害者の声を無視した「日韓合意」の破棄を求める韓国市民の声が高まる中で、釜山の日本総領事館前に、新たな「少女像」(平和の碑)が設置されたが、日本政府は即時撤去を韓国政府に強圧的に要求し、駐韓大使らを一時帰国させた。そして沖縄高江でのオスプレイパッド工事の強行と12月22日の北部訓練場の返還式典の強行や、米国トランプ新政権に世界に先駆けてすり寄る訪米。まさに「戦後」を力づくで終らせようとし、日米同盟の幻想の中に浸って、「世界の真ん中で輝く日本」を夢見る裸の王様だった。
国会が始まり10日が経過したが、衆参本会議や予算委員会などで、安倍政権の歴史認識や、「日韓合意」をめぐる「少女像」の撤去問題について、日本政府の傲慢な態度を追及する国会議員は与野党共に全く見受けられない。質問が出ても、日本軍「慰安婦」被害当事者の思いや、今現在韓国で起っている「市民革命」の状況について勘案した内容は一切なく、韓国政府の「日韓合意」の「不履行」を憂う内容ばかりが続いている。今年1月半ばに安倍首相がフィリピン訪問した際に、在フィリピン日本大使館前で、元日本軍「慰安婦」の被害者たちが抗議集会を開催したことも、昨年相次いで出された国連高官や人権諸条約委員会からの「日韓合意」に対する懸念表明についても、国会では議論されていなし、マスコミ報道も少なかった。
韓国国内のみならず世界中で増え続ける「平和の少女像」の意味や、「日韓合意」を懸念する世界の声について、日本政府は何も考えていない。
■ 「平和の少女像」がみつめる先にあるもの
昨年11月23日にソウル中央地裁で行われた「不二越」女子勤労挺身隊の損害賠償請求訴訟の判決公判に参加した。原告側の全面勝訴だった。80歳代後半、90歳代になる女性たちが、青春時代の受難とその後の人生の長年の苦労を想起しながら、尊厳を取り戻すために最後の闘いを続ける姿に心揺さぶられた。
数日後、初めてソウル日本大使館前に設置された「平和の少女像」に足を運んだ。その日は大きな行動はなかったが、「少女像」の横のテントの中で、女子学生が咳き込みながら見張り番をし、時々若い学生などが立ち寄り「少女像」を囲んでいた。若い学生たちの姿を見ながら、昨年夏に富山県を訪問し、朝鮮人強制連行の歴史に学び、不二越本社前での抗議行動にも参加した光州市の高校生たちのことを思い出した。日本の植民地時代に生きた当時の若者たちの受難の記憶は、今現在の韓国社会の若者の心の中にも着実に引き次がれていると感じた。
「少女像」が見つめる先にある新しい日本大使館が入ったオフィスビルの正面玄関前では、日本の朝鮮学校支援を続ける市民グループの一人が、「民族学校(朝鮮学校)差別反対!高校無償化適用!」と書いたプラカードを掲げて、凍える寒さの中、1時間以上立ち続けていた。
その翌日、ソウル市内の光化門広場を中心に、毎週土曜日に行われている「ろうそくデモ」に参加した。小雪がぱらつく中、若者たちや家族連れ、無数の市民たちが「パククネ大統領退陣」と書かれたバーナーを掲げながら、車両通行止めになった大通りを、青瓦台の大統領府を背にしたメインステージに向かって歩き続けた。途中、何カ所かでトラックを舞台にした会場ができており、多くの聴衆が演台に上がる若者たちの話に耳を傾け、声援を送っていた。中高生、大学生たちが次々に舞台に上がり、「国定教科書」問題や「セウォル号事件」の政府対応、厳しい受験競争や就職問題など、若者たちを取り巻く厳しい韓国社会の実情について、自分の考えを訴えていた。
一人でも家族連れでも友人同士でも、年齢や職業、活動歴などに関係なく誰でも参加でき、自分自身が直面する問題を皆で共有し、社会や政治のあり方を市民ひとりひとりの力で変えていけるという希望と自信が、参加者ひとりひとりの中に根付いているような雰囲気が、街中に満ちあふれていた。この日、「ろうそくデモ」は大統領府の数百m手前まで到達し、身動きが取れない人混みの中、深夜2時頃まで熱気に溢れた集会は続いた。
数日間のソウル滞在だったが、世界中に拡散し続ける「平和の少女像」が見つめる先には、日本軍「慰安婦」問題の真の解決や、世界中で続いている戦時性暴力の根絶への願いだけではなく、国家や大資本の論理に抑圧される市民たちの、国境や世代を超えた繋がりへの希望もあるように感じた。

連絡先 メールhalmoni_fujikoshisoson@yahoo.co.jp
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