名古屋高裁金沢支部判決文-要旨
高裁判決文-要旨
平成八年(ネ)第一五八号強制連行労働者等に対する未払賃金等請求控訴事件
控訴人ら 李鐘淑 外二名
被控訴人 株式会社不二越
(判決理由要旨)
第一 控訴人らの賃金請求について
一 賃金請求権の発生
昭和一九年、二〇年当時の控訴人らの被控訴人工場における就労期間中の賃金額についてはこれを具体的に特定するに足りる証拠はないが、被控訴人会社の同年代の社員と同程度の額の賃金請求権を有していたものと認められる。
二 弁済の抗弁について
被控訴人会社が控訴人らの賃金を実際に控訴人らに対して支払ったことを裏付けるに足りる証拠はないから、被控訴人の弁済の抗弁は採用できない。
三 消滅時効の抗弁について
控訴人らの本件賃金債権の消滅時効期間は、民法一七四条一号により、一年であると解される。そして、右債権の履行期の到来によって控訴人らは権利を行使することができるようになったのであるから、控訴人李及び控訴人崔の賃金債権については遅くとも昭和二〇年八月一日から、控訴人高の賃金債権については遅くとも昭和二〇年一二月一日から、消滅時効の進行を開始したものと解するのが相当である。もっとも、昭和二〇年八月一五日の第二次世界大戦の終戦により朝鮮は従前の日本の植民地支配を離れて独立し、その後、昭和四〇年に日韓基本条約とそれに伴う諸協定が締結されるまでは両国間に国交のない状態が続いていたという特殊な事情があるから、右の国交回復時をもって民法一六六条一項の「権利を行使することができる時」が到来したものと解しうる余地がある。しかし、右の昭和四〇年の国交回復時を本件賃金債権の消滅時効の起算点としたとしても、その時から、控訴人ら主張の賃金請求時である平成四年六月二三日あるいは本訴訟提起時である同年九月三〇日までに、既に二六年余も経過しているのであるから、控訴人らの本件賃金債権についてはいずれにしても消滅時効が完成している。
四 権利濫用の再抗弁について
控訴人らは、本件において被控訴人が消滅時効を援用することは権利の濫用であって許されない旨主張するが、原判決の説示のとおり、被控訴人が控訴人らの権利の行使を妨げたような事情も認められないから、右主張は採用できない。
もっとも、控訴人らが昭和二〇年に祖国に帰国した後の生活状況や戦時中日本の軍需工場に就労していたことについての祖国独立後の微妙な立場等を考慮すると、平成三年八月に日本国政府が日韓協定についての見解を改めたことを知り、これを契機として本訴提起に及んだ控訴人らをいわゆる権利の上に眠っていた者として非難することはできないが、消滅時効制度の趣旨は、権利の上に眠る者を保護しないことのみにあるのではなく、当該法律関係の早期確定の要請並びに一定の年月の経過によって証拠資料が散逸し、客観的事実関係の確定が困難になることをも配慮したものであるところ、本件においても年月の経過によって当時の客観的な資料(賃金台帳等)の滅失あるいは散逸が賃金の弁済消滅を主張する被控訴人の立証活動を制約していることも否定できないから、この点からしても、被控訴人が本訴において消滅時効を援用することが権利の濫用あるいは信義則に反するものとして許されないということはできない。
五 以上のとおりであるから、控訴人らの賃金請求は理由がない。
第二 国際人権法違反に基づく損害賠償請求並びに不法行為に基づく損害賠償請求及び謝罪広告の掲載請求について
当裁判所も原判決の説示のとおり、控訴人らの右各請求はいずれも民法七二四条後段の除斥期間(不法行為の時から二〇年)の経過によって許されないものと判断する。
除斥期間といえども絶対的なものではないが、控訴人らの除斥期間経過時の状況や昭和一九年、二〇年当時の被控訴人工場における就労状況に照らしても、除斥期間の規定の効果を否定するまでの特段の事情は認められない。
第三 債務不履行に基づく損害賠償請求について
仮に控訴人らに右請求権が発生していたとしても、昭和二〇年に控訴人らが帰国し、被控訴人の実質的支配から離脱して右請求権行使が可能になった時、若しくは前記のとおり遅くとも日本と韓国の国交が回復した昭和四〇年から、一〇年の経過によって民法一六七条の消滅時効が完成している。
被控訴人による時効の援用が権利の濫用にあたらないことについては、賃金債権の消滅時効援用に関して説示したところと同様である。
したがって、控訴人らの債務不履行に基づく損害賠償請求も失当である。
第四 結論
以上の検討によれば、控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきである。よって、右と結論において同旨の原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとする。
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平成八年(ネ)第一五八号強制連行労働者等に対する未払賃金等請求控訴事件
控訴人ら 李鐘淑 外二名
被控訴人 株式会社不二越
(判決理由要旨)
第一 控訴人らの賃金請求について
一 賃金請求権の発生
昭和一九年、二〇年当時の控訴人らの被控訴人工場における就労期間中の賃金額についてはこれを具体的に特定するに足りる証拠はないが、被控訴人会社の同年代の社員と同程度の額の賃金請求権を有していたものと認められる。
二 弁済の抗弁について
被控訴人会社が控訴人らの賃金を実際に控訴人らに対して支払ったことを裏付けるに足りる証拠はないから、被控訴人の弁済の抗弁は採用できない。
三 消滅時効の抗弁について
控訴人らの本件賃金債権の消滅時効期間は、民法一七四条一号により、一年であると解される。そして、右債権の履行期の到来によって控訴人らは権利を行使することができるようになったのであるから、控訴人李及び控訴人崔の賃金債権については遅くとも昭和二〇年八月一日から、控訴人高の賃金債権については遅くとも昭和二〇年一二月一日から、消滅時効の進行を開始したものと解するのが相当である。もっとも、昭和二〇年八月一五日の第二次世界大戦の終戦により朝鮮は従前の日本の植民地支配を離れて独立し、その後、昭和四〇年に日韓基本条約とそれに伴う諸協定が締結されるまでは両国間に国交のない状態が続いていたという特殊な事情があるから、右の国交回復時をもって民法一六六条一項の「権利を行使することができる時」が到来したものと解しうる余地がある。しかし、右の昭和四〇年の国交回復時を本件賃金債権の消滅時効の起算点としたとしても、その時から、控訴人ら主張の賃金請求時である平成四年六月二三日あるいは本訴訟提起時である同年九月三〇日までに、既に二六年余も経過しているのであるから、控訴人らの本件賃金債権についてはいずれにしても消滅時効が完成している。
四 権利濫用の再抗弁について
控訴人らは、本件において被控訴人が消滅時効を援用することは権利の濫用であって許されない旨主張するが、原判決の説示のとおり、被控訴人が控訴人らの権利の行使を妨げたような事情も認められないから、右主張は採用できない。
もっとも、控訴人らが昭和二〇年に祖国に帰国した後の生活状況や戦時中日本の軍需工場に就労していたことについての祖国独立後の微妙な立場等を考慮すると、平成三年八月に日本国政府が日韓協定についての見解を改めたことを知り、これを契機として本訴提起に及んだ控訴人らをいわゆる権利の上に眠っていた者として非難することはできないが、消滅時効制度の趣旨は、権利の上に眠る者を保護しないことのみにあるのではなく、当該法律関係の早期確定の要請並びに一定の年月の経過によって証拠資料が散逸し、客観的事実関係の確定が困難になることをも配慮したものであるところ、本件においても年月の経過によって当時の客観的な資料(賃金台帳等)の滅失あるいは散逸が賃金の弁済消滅を主張する被控訴人の立証活動を制約していることも否定できないから、この点からしても、被控訴人が本訴において消滅時効を援用することが権利の濫用あるいは信義則に反するものとして許されないということはできない。
五 以上のとおりであるから、控訴人らの賃金請求は理由がない。
第二 国際人権法違反に基づく損害賠償請求並びに不法行為に基づく損害賠償請求及び謝罪広告の掲載請求について
当裁判所も原判決の説示のとおり、控訴人らの右各請求はいずれも民法七二四条後段の除斥期間(不法行為の時から二〇年)の経過によって許されないものと判断する。
除斥期間といえども絶対的なものではないが、控訴人らの除斥期間経過時の状況や昭和一九年、二〇年当時の被控訴人工場における就労状況に照らしても、除斥期間の規定の効果を否定するまでの特段の事情は認められない。
第三 債務不履行に基づく損害賠償請求について
仮に控訴人らに右請求権が発生していたとしても、昭和二〇年に控訴人らが帰国し、被控訴人の実質的支配から離脱して右請求権行使が可能になった時、若しくは前記のとおり遅くとも日本と韓国の国交が回復した昭和四〇年から、一〇年の経過によって民法一六七条の消滅時効が完成している。
被控訴人による時効の援用が権利の濫用にあたらないことについては、賃金債権の消滅時効援用に関して説示したところと同様である。
したがって、控訴人らの債務不履行に基づく損害賠償請求も失当である。
第四 結論
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by fujikoshisosho
| 2008-07-12 14:07
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